藤沢和雄の「伯楽一顧」:(7/28)ポストサンデー (サラブnet)
藤沢和雄調教師の今回のコラム。サンデー産駒は種牡馬選びが難しいのに、ダンスインザダーク産駒に高評価はいかがなものかという点はそれほど目新しい内容ではない。しかし、ここで注目したいのは、
この点だ。ポストサンデーといえば、今は亡きサンデーサイレンスの後継者の問題であったり、非サンデー系の種牡馬であったりする。調教師の視点から見れば、他の調教師もサンデー産駒がいなくなるから、大して影響はない…といえそうのだが、重要なのが「自分で身体をつくってしまう」点じゃないだろうか?
これも結構言われる点ではあるのかもしれないが、ポストサンデーと絡めてみれば、現在サンデーサイレンス産駒依存の調教師はポストサンデーの時代にその腕が試されるのではないか?「自分で身体をつくってしまう」点は、どんな調教でも仕上がるということを表すんじゃないだろうか?それこそ、ハードな調教を無理して行わなくてもいいわけだし。このポストサンデーの問題は調教師の中にはビクビクしている人もいるんだろうなぁと思う。
そういう点も含めれば、「自分で身体をつくってくれる」サンデーの血をもつサンデーサイレンス後継種牡馬産駒のほうが、サンデーサイレンスの特徴を受け継いでくれる可能性が高いから、非サンデーサイレンス産駒よりも高値で取引されるとも考えられるのではないか。ポストサンデー争いを調教師の視点でみるのも、面白いんじゃないだろうか?
昨年を大きく上回る結果になった日高のセレクションセール。サンデーサイレンス亡き後で社台の影響が少なくとも以前よりは減ったこと、セレクションセールの浸透などが考えられるが、一番大きかったのが海の日に開催したことではないかと思う。
近年においては、馬主の力というものが強くなっていると考えられる。、たとえば、フサイチ、アドマイヤの馬主は有名である。調教師などに全てを任せることなく、自分の判断を加えて買うというスタイルである。もちろん、助言などはあるだろうが。そして、平日でもお構いなしの金持ちのポジションにいることも重要である。
ただ、一般的に馬主のなかには、休みがそうそうに取れるという人は少ないと考えられる。そうした中で、海の日に行ったというのは、非常に効果が大きかったのではないかと推測される。例年ならば、調教師にこれくらいの金額でなど前もっての打ち合わせによって決めていたものを、実際の現場に行って決めるのでは金額に差が出るものと考えられるだろう。
このように結果が出るのであれば、土日に競馬場でセールを行っても面白いんじゃないかと思う。祝日だけの効果と限定するのは気が早いかもしれない。実際、どれだけの馬主が参加していたかは気になるところではある。
10年で44%減少した種牡馬 (netkeiba.com)
メジロライアンの種牡馬評価 (昨日の風はどんなのだっけ?)
良くも悪くも人気商売だから仕方ない…ということもできるんだが、そういう構造になっているのが原因ではないか?「え?どういうこと?」というと、生産の現場は、いわゆる走るであろう仔・良血馬が売れるという現状がある。これ自体は正しい。ただ、それが実力を判断してのものではなく、期待込みの人気商売になってしまっている。
生産者の目的はレースに馬を生産することが目的だと思うのだが、どうも売れる馬を生産することに熱心になっているような気がする。これはイコールじゃないの?と思う人もいるとは思うけれど、違うのではないかと思う。レースに勝てる馬を生産すれば、その生産者は評価され、その強い馬の弟妹には高評価が与えられる。
ただ、そのような強い馬が生まれていない生産者にとっては人気のある種牡馬を交配せざるを得ない。まずは、売らなくてはならないのだから。そうなると、内国産にもいい馬がいるが、同じ血統の外国産種牡馬ブランドに頼らなくてはならなく、内国産の種牡馬は能力があっても併用停止になってしまう。もちろん、内国産を評価して交配する生産者もいるだろうが、それはオーナーブリーダーであったり、余裕のある人に限られてしまう (そんな生産者はいないだろうが)。
レースに勝てる馬の生産者も同様に、さらにブランド力のある種牡馬をつければ、より高い値で売れるのだからブランド力のある種牡馬へ移行してしまうだろう。そうなると、内国産種牡馬のとる道は標準以下の繁殖牝馬であったり、もしくは、種付けすらできなくなってしまうのではないだろうか?
それなら、どうすれば良いかと言えば、人気商売を実力主義にしてしまえばいいのだ。いまの生産者の主な収入源は仔馬を売ることが中心で、レースに走る馬を生産して売るということだろう。端的に言えば、賞金の20%を生産者に充ててしまえだ (生産者賞は廃止して)。この際には調教師も10~15%にして、馬主の割合を50~60%に落として、預託料を半分近くにするのが望ましい。
これで、どういうことになるかというと、高く売れる人気のある馬を生産するより、走る馬を生産するしかなくなる。この状況では、馬を馬主はその投資したお金を回収できないから高くは買えない。そして、生産者も同じように売ることによっては回収できないから、走る馬を生産しなくてはならない。調教師は預託料が半分になり、ますますの実力主義になる (馬主の負担を減らすという意味もあるが)。
結果的にはそれぞれの収入はおそらく変わらず、目的を失った人気商売でなくなると思う。これならば、内国産種牡馬も競争に参加できると思うんだが、どうだろう?結果を出しても人気が出ない現状は、いかがなものでしょうか?
国際的評価が上がれば、外国馬が来てくれるなんて言うのはおかしな話だ……とも捉えられる。まぁ、そこは別に問題にしたくないので、生産界からの反発についてちょっと触れてみる。生産界からの反発というのは、おそらく今のままでも経営は厳しいのに、そこに外国産馬、外国馬の出走レースが増えるなんてたまったもんじゃないという趣旨でしょう。
うーん、逆じゃないか?外国からの種牡馬を輸入することによって、日本にはない血を導入する。これは正しい。血の袋小路に陥る危険性があるし、いいものは取り入れなくてはいけない。じゃあ、外国へ種牡馬を輸出することはあるのか?あるにはあるが、期待はずれに終わった馬が多く輸出されている。輸入する種牡馬よりも、価値を低く見られてであろう。この部分が今回の計画により、正常な価値での取引につながるのではないか?
つまり、どういうことかというと、世界の名馬と名勝負をした馬は評価をされる。そう単純なものではないが、日本でのそういうレースを経て、海外へ挑戦・参戦ができるのではないかということだ。タップダンスシチーなんてその例にあたる (勝つかどうかは別だが)。そういったチャンスを増やす流れが生まれることによって、日本の血というものが評価されるはずである。
たとえば、サンデーサイレンス産駒がエルコンドルパサーのように、海外で好走をしたとすれば、そのサンデーサイレンスの血というのは高く評価され、価値が高まり海外への輸出も容易になるだろう。まぁ、日本人が有り難がって出さない状況も考えられるが、良い方向に進むのは間違いない。
日本のレベルというものが世界へ伝わると意味では今回の計画は歓迎である。日本のレベルというものが評価されれば、内国産種牡馬を輸出することが可能になる。種牡馬の廃用・併用停止が多いわけなんだけど、そういった馬の人生の手助けにもなるんじゃないかな?
また、別の観点から見れば、世界へ市場を開くこともできる。海外への積極的な遠征によって、日本のあの血統はヨーロッパで走るぞということになれば、仮に日本の土が合わなくてももらい手が生まれる。そういう風には現時点では見られるケースは少ないわけでそういうチャンスが増えるのなら歓迎すべきである。逆に、外国産馬が勝つケースが目立つのなら、自分で買って稼げばいい。何でも保護をすればいいってもんじゃないと思いがあるから、こんなことを思うのかもしれないが。
いまさらながら、タップダンスシチーが生涯現役発言をしたことについて話そうか。
最初は「はぁ?!」だったけど、いまの競馬をよくよく振り返ってみれば、シンボリクリスエスがあのレースをして引退するように、引退の考え方が変わっている。上の世代VS下の世代という構図が少なくなってきているなぁと。
つまりは、レースで稼がずに、種牡馬になった方が稼げるという構図。最盛期に引退ともいえる。これは世界的にみると、正しいのかもしれないけど、その流れというのは俺的には決して喜ばしいとは思わない。
例えば、ナリタブライアン。ナリタブライアンが苦しんだ2年。そして、輝きを取り戻した阪神大賞典。そんなに簡単には種牡馬の価値なんて下がりはしないでしょ?大暴落とまではいかないし。そんなことを思っていたら、競走能力があるなら少しでも長く現役を続けてもらったほうがいいよなと思う。
たしかに、価値が下がるケースもある。たとえば、エアシャカールなどは種牡馬の価値が下がったかもしれないけどさ。でも、ちゃんとした評価をしたら、そうなっただけの話であって、それ自体は別に悪いことではない。
むしろ、早くに引退する馬は潜在的な部分が評価され過ぎている。これが間違いじゃないか?そういう潜在的な部分に期待しすぎる面が多すぎる。この過剰評価が馬主を助け、生産者にしわ寄せが来ている。
生産者が取るべき行動はその様なシンジケートを持つのではなく、日に当たらない種牡馬の中から、自牧場の中の繁殖牝馬とかけ合わせることだろう。もちろん、庭先取引なんかはできないかもしれない。ただ、トレーニングセールというシステムが日本に入ってきたのだから、そのシステムをうまく利用すべき。前にも書いたけど、ラムタラの購入資金は本当に使いどころを間違えたよ。
まとめとしては、資本主義で競争社会なのだから、仕方はないかもしれないけれど、そういう部分を踏まえて、引退の時期を考えたり、種牡馬の価値を考えるといいんじゃないかと思う。酷使という意味ではなく、やれるところまでやるというジャパニーズスタイル。これこそが牧場を救うと俺は思う。そうすると、今では佐々木晶調教師の競馬界に対するアンチテーゼみたいなものだろうと考えられる。深読みしすぎかもしれないけどね。
サンデーサイレンスは本番に向けての成長力というのが計り知れない。そういう可能性にかけて馬券を買うこともある。この話は天皇賞の話ではなく、海外の話。
Newmarket 2004UltimateBet.com 1000 Guineas Latest Prices(多分、出馬表)
Sundrop (JPN)(成績)
■日本産Fペガサス産駒、愛国デビューへ (netkeiba.com)
■フサイチペガサス産駒、世界初勝利(netkeiba.com)
フサイチペガサス産駒が世界初勝利だそうで。フサイチペガサス産駒を誰にも渡さない勢いで買う馬主は一安心ですかね。日本で走る産駒も期待していいかも。仕上がりも早そうだしPOG向きで人気になるのかな?POGはやらんので正直わからなかったりするけど。
関連記事:
■フサイチペガサス産駒が米国デビュー (netkeiba.com)
■フサイチペガサス産駒、450万ドルで落札(netkeiba.com)
追記(4月24日):
POG的にはそうでもないらしい(詳しくはPOG BlogさんのFusaichi Pegasus産駒の初勝利は今年のPOGにも微妙に影響を?へ)
【競馬】武ダンスインザムード5枠9番!桜花賞確定(SANSPO.COM)
スイープは2枠4番、桜花賞枠順確定(nikkansports.com)
桜花賞の枠順が確定。馬柱を見れば、「父:サンデーサイレンス」が目立つ。売れる仔を、走る仔を、作るためにも牧場関係者がサンデーサイレンスをつけたくなるのも無理がないなぁと改めて思う。ここまで安定してGIに出走してくると、他の種牡馬の立場がないよ。
しかし、ここまで圧倒的だと逆に夢がないね。投資した分だけ返ってくるようにみえるビジネスになってるもん。マイネル軍団の岡田さんも言ってるけど(ラフィアンの馬が優っているより)、セレクトセールなどの高騰はその世界に住むものにとっても「別世界」になっているわけだし。だからといって、馬産業界が好況かといえば一部だけであるし。「トウカイテイオーの仔でダービー制覇だ」みたいな馬主はいていいわけで、どうもそういう馬主は少ないような気がする。サンデーサイレンスの仔を買っておけば、重賞を狙えるという短絡的ではあるが確実と思われる考えが浸透してしまったともいえる。別にそれは間違いではないのだけれど、右に倣えじゃ競馬界の成長は止まってしまうでしょ?
そうした意味ではサンデーサイレンス亡き今後にブランドに頼っていた者たちの真価が問われる気がします(SSブランドを先導した社台が一番動いているようにみえるのがさすがというべきなのか、他が情けないというか)。